無機中空体を利用した低吸水、高強度軽量陶器について


 当試験場では産地の振興を目的に、新素材に関する研究・新製品の開発を進めています。ここに紹介させて頂くものは昨年に続き軽量素材に関するものです。昨年は有機中空樹脂フィラーを利用した多孔質軽量陶器でしたが今年は無機中空体を利用した軽量陶器です。

 

無機中空体にはガラスバルーン、シラスバルーン、パーライト発泡体等が良く知られていますがこれらは耐火性が低いもので一般陶磁器の焼成温度では熔けてしまいます。そこで今回は耐火性の高いフライアッシュバルーン(FAB)を使用しました。

火力発電等微粉炭燃焼の灰は我が国の石炭使用量から推定すると約1,000万トンがでると予想されそのうち電気集塵機で捕集された微粉末がフライアッシュ(FA)といわれています。これらの70%はセメント・コンクリート方面に15%は路盤材に使用されており近年は陶磁器方面への活用研究もなされつつあります。

FABはこのFA中に少量含まれる水より軽い中空状のものを分離精製したもので浮灰といわれています。現在日本では分離されていませんがイギリス、中国、インド、オーストラリア等で分離精製されたものが日本輸入され主に補修セメント混和剤や特殊塗料用フィラーに使われていますが陶磁器への活用はあまりされていません。

その一つの理由としてセルの厚いものは加熱すると破裂すること、また焼成中にクリストバライト(250℃付近でおおきな体積膨張を起こす)が晶出するため点剥離や冷却割れ等の原因となります。今回は仮焼処理することにより破裂するものを予め除きました。予備試験として8種類のFABについて比較を行った結果いくつかのものが陶磁器に使える可能性がでてきました。

 

FABは微粉球状であり通常の坏土に10%程度は混入でき85%程度の軽量化はできます。さらに軽量化するためにはFABを大量に入れなければなりませんが成形が困難になり焼結せず吸水率が高く強度も弱くなってしまいます。研究を重ねた結果これらの問題をある程度解決できました。

 

今回は次の項目について特許申請をしました。

 

  1. 一般陶磁器の焼成温度領域で使用できるFABの特性について。FABの耐火度、粒径、セル厚み。
  2. FABの調合範囲
  3. 可塑成形するための可塑材の種類とその量。FABと可塑材を燒結するための燒結材とその量
  4. 焼成体の比重、吸水率、曲げ強さの範囲とそれでできた多孔質軽量陶器

 

 

無機中空体(FAB

中空樹脂粉末

産地

国外。

現在まで入手できたものはイギリス、中国、オーストラリア産。

海外1

国内1

性状

見かけ比重0.60.8

半天然無機素材で組成、粒度等が不安定。

焼成後もそのまま残り独立気孔が形成される。

見かけ比重0.02以下。

有機化学合成品で安定している。

600℃までに完全に焼失する。

前処理

仮焼する必要がある。

必要なし。

坏土調整

混合分散が容易

極端に軽いため混合分散にはノウハウがある。

成形

ある程度のプレス成形が可能

プレス成形が困難である。

物性

ムライトを晶出するため成形体の膨張係数は小さくなる。

熱膨張の小さい釉薬が必要。

クリストバライトによる冷め割れの虞がある。

混入量を多くしても吸水率が低い。

強度が比較的高い。

ベースの素地の性状がそのまま残るので、通常の釉薬が使える。

混入量を多くすると吸水率が高くなり、強度が低くなる。

価格

200300円/kg (70100円/リットル)

+仮焼費用が必要

500円/kg (60円/リットル)